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2012年漫画総括

去年やらなかったので、早めにやっとこうと思ってバーっとまとめ。
2012年に読んだ作品で、個人的に面白かった漫画10作品をセレクト。順位付けはしません。

■式の前日(穂積)
 帯の売り文句「68億分の2の奇跡。」が的を射ている、色んな"ふたり"に焦点を当てたオムニバス。小説でいうところの行間を、上手く表現していると思う。作品の裏側にある世界がじんわりと湧き上がってくる。必要最小限の表現で、作品の深みを出す力は豊田徹也、高浜寛の流れを汲む才能かも。今後の活躍が楽しみ。


■ハイスコアガール(押切蓮介)
 アラサー男子どストライクの90年代ゲーム(主に格ゲー・アクション)をベースにしたボーイ・ミーツ・ガール。ヒロインだけでなく、作品自体がツンデレ。ポジティブな私小説的デレを、ネガティブな自虐的ツンからのこち亀みたいな事故オチで上手く調和させている。「ピコピコ少年」からよく昇華させたなと思う。


■ゴーグル(豊田徹也)
 デビュー作の標題「ゴーグル」を含む豊田徹也の最新短編集。豊田作品は発売されたこと自体に価値があるので。とはいうものの、短編集としての完成度が異様に高い。過去作品を読んでいる人には色んな発見があるし、初めて読む人には豊田徹也の魅力が十二分に伝わるであろう良作。「アンダーカレント」「珈琲時間」と共にどうぞ。


■ひばりの朝(ヤマシタトモコ)
 14歳にしては肉感的な身体つきの日波里を取り巻く人間たちの好意、悪意、同情、劣情を浮き上がらせた1巻。今後が気になる。ヤマシタトモコの「人の心に浮かんでは消える掴みどころのない靄」を浮き立たせる技は、嫌なんだけど癖になる。シギサワカヤが恋だの愛だのを"個人"でやっている所を、ヤマシタトモコは思春期だの青春だのを"集団"でやっている感じ。


■ぼくらのフンカ祭(真造圭伍)
 故郷の劇的な変化にネガティブな富山とポジティブな桜島。変化に翻弄される二人の友情の行く末を描く。自分はこういうのが好きだなーってつくづく思った。何にもできないし、何にもなれないしっていう閉塞感をどうにかしようともがいて、結局最後に残るのは…っていう。「森山中教習所」も"残ったもの"は同じだが、フンカ祭の方が救いがある。短編集「台風の日」も良い。


■少年ノート(鎌谷悠希)
 合唱とボーイ・ソプラノをテーマに、"一度きり"の青春の美しさ、尊さ、儚さを描く。この作者の登場人物が壁を超えた時の表現がとても好き。すごく独特な表現なんだけど、視覚から脳にずどんと入ってくる。読切の時の見開きの衝撃が、規模を変えて波のように寄せては引いていくような。それが毎回楽しみ。


■ウツボラ(中村明日美子)
 中村明日美子初のサイコ・サスペンス。話としては「鉄道少女漫画」「片恋の日記少女」あたりの温かい日常系が好きなんだが、この人の絵は百合とかBLに見られるエログロ系の方がより引き立つな、とも確かに思っていて、それがサスペンスにビタっとハマるのは必然とも言える。作品を通じて流れる妖艶な狂気に触れて、中村明日美子の魅力を再認識。


■Latin 高畠エナガ短編集 1(高畠エナガ)
 アンドロイドやエルフ、化け猫といった亜人と人間との交流を描いたオムニバス。とにかく、表紙のインパクトは今年一番ではなかろうか。中身も表紙に違わぬアツい話満載で、好き嫌いは分かれそうだけど、個人的には好き。暑苦しささえ感じる描写の中から、作者の努力とか汗とか気合いとか色んなものがにじみ出てる感じ。好感が持てる。


■路地恋花(麻生みこと)
 京都のとある路地にある、職人や芸術家の集まる長屋で起こる恋模様を描いたオムニバス。舞台に京都の路地、役者に職人・芸術家という設定自体が魅力的なので、後はいかに上手く動かすか…という所だと思うが、あまり労せずして描けているような印象。自然とキャラが動いて、魅力的なストーリーが生まれる。押しつけがましくない男女関係の描写にそっと癒される。


■さすらいエマノン(鶴田謙二)
 梶尾真治原作の同名小説のコミカライズ。昨年MOOKとして先行して出ていた「さすらいエマノン」に未収録の「さすらいエマノン'67」が追加された単行本版。原作の表紙を描いているだけあって、エマノンシリーズの原作の雰囲気と鶴田謙二の緻密な絵の調和はとても良好。連綿と続くエマノンの記憶の中に生きる人たちの儚さ。そこからにじみ出る愛おしさ。沁みます。


10作品選んだはいいけど、他にも面白いものいっぱいあるので、次点を。


■銀の匙(荒川弘)
 題材上、どうしても「もやしもん」のイメージを持ってしまっていたが、全然違った。すごく面白い。色々と詰め込んで描いているはずなのに、不思議とさらっと読めちゃう。知識がメインではなくて、あくまで絵とストーリーがメイン。これぞ"漫画"。

■BUTTER!!!(ヤマシタトモコ)
 ヤマシタトモコ十八番の人間関係もやもやモノかと思いきや、意外としっかり社交ダンスしていることでも有名。「大会に出たい」という部長の想いに共感。「本当に楽しむためのステップアップ」ってすごく大事。

■宇宙兄弟(小山宙哉)
 アニメに映画にと振り回された一年だったが、やっぱり新刊が出ると漫画の面白さを再認識する。話自体の面白さもそうだけど、要所要所で金言のような言葉があってはっとさせられるのも良い。とにかく六太が魅力的すぎる。

■バクマン。(小畑健/大場つぐみ)
 あんなに素直にキレイに終わるとは思わなかったので、逆に新鮮だった。最初はどちらかというとジャンプのシステムに焦点が当たっていたが、途中からは夢を叶えるために奮闘する少年たちの友情・努力・勝利の物語に。THE・ジャンプだね!(読んでないのに)

■娚の一生, 姉の結婚, 恋と軍艦(西炯子)
 今年はやけにいっぱい読んだなぁということで、西炯子作品を次点に。煮え切らない展開を突如引っかき回して爆発させることが好きなようで、読んでいる方としては積み上げてきたものを一気に台無しにされる感じでたまったもんじゃない。けど読んでしまう不思議。


次点はこれぐらいにしといて、単行本化されていない注目作品を一つ。


■さよーならみなさん(西村ツチカ)
 西村ツチカ作品との出会いは、星新一のショートショート作品をコミカライズした「親しげな悪魔」収録の「もてなし」。その後、月スピで「さよーならみなさん」の連載が始まったのをきっかけに、「なかよし団の冒険」、「かわいそうな真弓さん」を購入。とにかく癖になる不思議な描写。現在の漫画界で唯一無二の存在感です。


最後に読んでみたい漫画一覧。持ってる人貸してください。


■ボールルームへようこそ(竹内 友)
■昭和元禄落語心中(雲田はるこ)
■惡の華(押見修造)
■ふうらい姉妹(長崎ライチ)
■ひらけ駒!(南Q太)
■機械仕掛けの愛(業田良家)
■私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!(谷川ニコ)
■人間仮免中(卯月妙子)
■いいなりゴハン(森繁拓真)
■預言者ピッピ(地下沢中也)
■五大湖フルバースト(西野マルタ)
■空が灰色だから(阿部共実)
■三等星のスピカ(イシノアヤ)


以上、書き殴って終わり。

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